ホームシック
ルシンガ島からナイロビに戻って4日が経った。
やることがあるうちはよかったけれど、ついにノープランの生活に戻ってしまった。
明日やることも、明後日やることも決まっていない。
そろそろネタも尽きてきた頃か。
そんな中で、帰りのフライトまであと10日に迫っている。
こっちかな、あっちかなと嗅覚だけを頼りにこの二カ月半は爆走し、なんだかんだで充実した日々を送ってきた。
はじめのうちはこの国に住みたくて住みたくて、何とかこの国に長くいられる方法を探していたけれど、ここ最近は今学んでいることをどうやって日本での生活に取り入れていこうかと、そんな妄想が膨らんでいる。
こんな状況なので帰国するにはちょうどよいタイミング。
のはずなんだけど。
何となく今の状況から、帰国日を延長することに決めてしまった。
歯磨き指導をもう少しやりたいと思ってはいたけれど、だからと言って帰りのフライトを放棄してしまうのもやりすぎかなぁなんて思ったりもして。
それでもいろんな人に延ばそうかなぁ、どうしようかなぁと相談するうちに、ビザの延長に協力してくれる人が現れたりして、自分の腹が決まらぬうちに自ずと延長が決まってしまった。
この感じ。
今回のケニア行きが決まった時とよく似ている。
自分で決めきれないうちに期限が迫り、いつの間にか仕事を辞めてケニアに行くと公表してしまっていた。
こういう時の流れには逆らわない方がよいと、経験が教えてくれている。
こうしてナイロビで次の動きを待っていると、次第に気が滅入ってくる。
昨日は本当に力が出ず、一日のほとんどをベッドの上で過ごした。
オユギスの村で鍼灸師のゆうたさんが、色んなことを考えすぎて気が頭に上ってしまっているのだろうと教えてくれた。
気が降りてこないわけだから丹田にも力がなくなり、足元は冷える。
私の冷え性もおそらく頭を使いすぎのところから来ているのだろうと、妙な確信がわいてくる。
そうそう、頭を使いすぎてるんだよ私。
でもそれが分かっただけでも進歩で、となると気を足元に落としてみようと、早速秘密の特訓が始まった。
少なくともこうして足元に集中するうちは頭で考えすぎることはないけれど、これを常にキープするのは至難の業だ。
ふと、ヴィッパサナー瞑想で学んだ「身随感」と「心随感」が頭に浮かんだ。
身体で感じる五感と、心で感じる感情は同じ感覚だということ。
心の方が五感よりも優れているという事はない。
それならば、あれこれ考えるのをやめて、風の音を聴いたり、草花を観たり、そういう瞬間をもっと大切にするべきじゃないのかとふと思った。
見えないものに想いを馳せるより、目の前の一瞬を大切にすること。
性格上、どうしても次のミッションを探そうとして悶々と考えてしまいがちだけど、ふと立ち止まって感じることもまた、大切なことなんだろう。
マインドフルネスというやつだ。
そうはいっても、恋しい日本。
笑いあった家族、友達。
優しい味のごはん。
あったかいお風呂。
穏やかな人のやさしさ。
ケニアに来て初めて、ホームシックになった。
いつもはケニアが好きで好きで、この国を離れたいなんて少しも思わなかったのに。
やっぱりこれまでと一味違う、ケニア。