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☆ぐんぐるぱーにゃ☆な暮らし

なんやかんやとたどり着いた、ぐんぐるぱーにゃ。当たり前のようで当たり前じゃない。そんな世界が、目の前に広がっている!ありがとう、そしてさようなら昔のわたし!これから始まる「わたしライフ」をこそこそと綴っていきます~

LIFE

夜の11時にただビスケットを黙々と食べている自分がいる。

寝る前におやつはだめだとか、それでなくても今日はお酒を飲んで帰ってきたんだからとか、体に悪いとか美容に悪いとか、そんなんはどうでもいいのだ。

 

ケニアに来て出会った日本人がいる。

いくちゃん。

彼女とはエンブの団体を訪れた時に出会い、縁あってルシンガ島のワークキャンプに一緒に参加することになった。

各国からの参加者の中で唯一日本人同士だった私といくちゃんは、日本人独特のセンスを共有し合い、切磋琢磨してストレスの多いキャンプを乗り越えてきた。

二人でキャンプファイヤーの火を守りながらいろんな話をした。

日本の社会のこと、私とケニアとのこと、死んだ父のこと、彼女の婚約者のこと。

東北のボランティアで知り合ったいくちゃんとその彼。

誰かのために、と情熱を傾ける場で出会った二人が結ばれるなんて、本当に素敵だと思った。

お互いに尊敬し合い、将来を決めたのだろうと思った。

それなのに。

 

運命は残酷だ。

昨日の夜いくちゃんからメッセージを受け取った。

婚約者の彼が日本の雪山で遭難し、連絡が途絶えたままだということ。

あと数カ月の滞在を残し、いくちゃんは帰路についているということ。

こんな時にでも、最後にあいさつできずにすみませんと、顔文字を入れながら律儀に詫びをいれるいくちゃんの姿を想うと胸が痛かった。

遠い遠いケニアから、チケットが取れず数日身動きが取れずに、ぬぐい切れない不安な気持ちと闘っていたいくちゃん。

長い長いフライトを一人耐えていたいくちゃんを想うと、涙が出た。

 

そんな中、私は友人ジャトーに会いに行く約束をしていた。

近所のマーケットで服を販売するくジャトーとは、いつの間にか仲良くなり、一緒にジョギングしたり家を訪れたりする仲になっていた。

年も背丈も同じ、20代に苦労したという経験も同じだった。

今日は彼女の31歳の誕生日。

特別なことはできないけれど、せめて小さなプレゼントを渡しておめでとうと言ってあげたかった。

でも今日はなんだか気が重くて、せっかくの記念日に重苦しいのもなんだか悪い気がして、なかなか外に出られなかった。

時間が刻一刻と過ぎる中、ようやく夕方になって彼女のいるショップに向かった。

誕生日おめでとうの言葉と共にプレゼントを渡したり、写真撮影をしたり。

それから話し好きのジャトーは、2時間の間延々と話を続けた。

 

話は彼女の出身民族であるルオ人の話題に。

見栄っ張りなルオ人たちは、お金がなくても困っていないふりをしたり、抱えている問題に関しても本当のことを言わない。

彼女はルオ人の友人や従姉妹について話し始めた。

ルオ人の友人、従姉妹、親戚のおばさん。

彼らはみんな、病気になったりよくなったりを繰り返し、 その度にこれはマラリアだとか腸チフスだとか、色んな病名が出てきたという。

こんなに長期の間病気だなんて、まさか、HIV/AIDS。

彼女もをそれを疑いテストをしたのか尋ねたけれど、みんなポジティブだとは言わない。

結局病名ががはっきり知らされないまま、彼らは次々に命を落としていったという。

最期の状態はひどいもので、いつもの容姿が数日後には体は骨と皮だけになり、目は落ち込み、唇は腫れて、目も当てられない姿だったという。

数日前に電話で話した相手があっけなく死んだと知らされる、その虚しさ。

死後に近親者から知らされる病名。

HIVポジティブであることを受け入れず、薬をまともに飲もうとしない、その変な見栄と生きることへの諦めが、彼女にとってはなんとも悲しいことだったという。

HIVポジティブであってもきちんと薬を飲めば、がん患者よりも生存の可能性は高いのに、ばかばかしい。

ジャトーは悲しそうに語った。

ジャトーの生活もたやすいものではない。

子供を学校に通わせるために何とかお金を工面している、お母さんである。

それでもジャトーは、生きていれば何とかなる、何とかしようとすれば、何とかなる。

そう話した。

 

今日は彼女の誕生日。

帰りに一杯だけ、とクラブによってお酒を飲んだ。

私のおごりで一杯のはずが、彼女のおごりで二杯目、彼女のお兄さんが来て三杯になった。

昼間に撮った写真を見てゲラゲラ笑いながら。

涙が出るくらい笑ったのは久々だ。

今日という日をジャトーと過ごせてよかったと、心から思った。

 

寝る前に、雪山にいるであろういくちゃんの婚約者に電話をかけてみた。

彼の電話番号が私の携帯に残っているのをふと思い出したのだ。

ワークキャンプ中に、声が聴きたいだろうから電話してみたらと私の電話を貸してあげて、嬉しそうに彼と話していたいくちゃんの姿が蘇ってくる。

今、電話の向こうには、電源オフのアナウンスが冷たく流れている。

 

いくちゃん。

どうかいくちゃんが強くいられますように。